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福岡高等裁判所 昭和46年(ネ)106号 判決 1971年10月14日

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人は控訴人らに対し、別紙目録記載の控訴人ら各所有の各株券を引渡せ、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張ならびに証拠関係は、控訴人らにおいて、

(一)  なお、控訴人ら所有の株券を被控訴人に交付したのは、被控訴人が訴外肥後合板株式会社に対し合板材の原木を出荷することを前提とし、控訴人らにおいて被控訴人がそうしてくれるものと信じていたためであつたのに、被控訴人において右原木を出荷してくれなかつたのであるから、結局、控訴人らの本件株券の交付は、要素の錯誤に基くものであつて無効であるから、その返還を求めるものである。

と述べた。

(二)  証拠(省略)

理由

一、当裁判所も控訴人らの本訴請求はいずれも理由がなく、これを棄却すべきものと判断するものであるが、その理由は、つぎに附加訂正するほかは原判決の理由説示と同一であるから、これをここに引用する。

(一)  原判決三枚目表末行目の「証人下村武徳の証言」のつぎに「(第二回)」を加え、同三枚目裏一行目の「同高木信雄各本人尋問の結果」のつぎに「および当審における控訴人高木義雄本人尋問の結果(後記措信しない部分を除く)ならびに弁論の全趣旨を総合すると」を加えた上、同行目の「によれば」を削る。

(二)  同三枚目裏四行目の「切迫し」を「切迫していたが、資金難のためその支払が困難な情況にあつたので、」と訂正し、同六行目の「三名は」のつぎに「相談の上、」を加える。

(三)  同三枚目裏一三行目の「(二)原告ら」以下同四枚目表の三行目末までを「(二)、訴外肥後合板株式会社が原告藤雄の創立にかかるものであり、原告ツタ子は右藤雄の妻であり、同美智子はその娘であつて、当時すでに他家に嫁いでいたが、右美智子を除く他の原告らは、いずれも右原告藤雄方に同居しており、右ツタ子および美智子名義の株券は常時原告藤雄の手許に保管が委ねられていたことよりして、同女らは、その所有名義の株式につき、原告藤雄や同信雄、同義雄らにその処分等をも一任していたこと、そこで、右藤雄、信雄および義雄らは相談の上、前記の如く本件株券を被控訴人に担保として提供したものであることが認められ、」と訂正し、同四行目の「本人尋問の結果」のつぎに「当審における控訴人高木義雄本人尋問の結果」を加え、同五行目「限りではない。」のつぎに「そうすると、原告ツタ子および同美智子関係においては、前記藤雄、信雄、義雄らがその代理人として適法になしたものというべきである。」を加える。

(四)  同四枚目裏九行目の「当事者間では無効視すべきいわれがないから」を「当事者間においてはその譲渡は有効と解すべきである(相対的無効)から」と訂正する。

(五)  控訴人らは本件株券の交付は要素の錯誤に基くものであるから無効である旨主張するが、本件株券を控訴人らが被控訴人に交付した経緯は、前記認定(引用の原判決認定を含む)のとおりであつて、それが譲渡担保として交付されたものであることが明らかであるから、控訴人らの要素の錯誤の主張はこれを認めることはできない。もつとも、原審における控訴人高木藤雄、同高木信雄の各本人尋問の結果ならびに当審における控訴人高木義雄本人尋問の結果中には、控訴人らの右主張にそうかの如き部分があるけれどもにわかに信用し難く、他に前記認定を覆して控訴人らの右主張を認めるに足りる証拠はない。よつて、控訴人らの右主張も採用しない。

二、そうすると、原判決は相当であつて、控訴人らの本件控訴はいずれも理由がないのでこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第九三条本文、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

別紙

目録

肥後合板株式会社株式

第一 高木藤雄分

三三万九五〇〇株(一万株券二四枚、五〇〇〇株券九枚、一〇〇〇株券三四枚、一〇〇株券一九〇枚、一〇株券一五〇枚)

第二 高木ツタ子分

一万六〇〇〇株(一万株券一枚、一〇〇〇株券六枚)

第三 高木信雄分

一万二〇〇〇株(五〇〇〇株券一枚、一〇〇〇株券七枚)

第四 高木美智子分

一万株(五〇〇〇株券一枚、一〇〇〇株券五枚)

第五 高木義雄分

一万株(五〇〇〇株券一枚、一〇〇〇株券五枚)

以上合計三八万七五〇〇株(四三四枚)。

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